0707 クノッソス、アミューズメント化した遺跡。

昨日の夜クレタ島のイラクリオン(英語表記だとheraklionヘラクリオン)に上陸し港の近くに宿をとった。ここはギリシアの島々の中で最南端、かつ最も大きい島である。300km向こうはアフリカ大陸である。ここはギリシア文明発祥の地といわれる。人が住み始めたのが今から約9000年~8000年前で5000年前から高度な文明が存在し、3800年から3500年前にひとつの最盛期を迎えたといわれている。前日訪れたサントリーニ島もその中に含まれ、これら全体をギリシア文明と呼んでいる。

ここにはクノッソス、フェストス、マリアという三つの重要な遺跡がある。

今日はまず私たちのいるイクラリオンの近く(バスで約20分)のクノッソス遺跡を訪ねる。これはギリシア神話の中でも特に良く知られている場所である。クレタのミノス王が自分の息子であるミノタウロスという怪物を閉じ込める為にダイダロスに作らせた迷宮=ラビュリントスとして。クレタがアテネをも完全な支配下に置いていた時代である。

また、これが単なる神話ではなく実在のものであったことを英国の考古学者アーサー・エヴァンスが1900年に発掘し、歴史上の事実として証明したことでも有名である。

そしてこのことからかつてプラトンの述べたアトランティス文明がここやサントリーニ島であったのではないかという話にも繋がるのだ。

そういった(興味深いが)細かい話を詳述する時間がないし、ここでの目的でもない。とりあえず私たちは写真のようにこのクノッソスの遺跡を訪れた。ここはかなり広大で興味深いものがあり、その重要性はよく理解できた。

しかし(これまでもいろいろ言われていたらしい)残念ながらアーサー・エヴァンスによる発掘と修復にはかなり重大な問題があると思った。私は考古学の専門家でも修復の専門家でもないのでとやかく言う筋合いはないのだろうが、これまで様々な遺跡を見てきた直感で言わせてもらえばエヴァンスは間違っていると思う。彼は修復と称して遺跡をコンクリートで再現(再構築)しているのだ。だから結果として建物の姿など、見る人にとっては分かりやすいのかもしれない。床も平らになって歩きやすい。しかし現地でこれは絶対やってはいけないことだろうと思う。別の場所に再現するならば別だが。だから見ていてどこまでがオリジナルでどこからが手を加えた物かがわかりずらい。しかも本当の修復ならば本来、当時と同じ素材、同じ工法をとるべきなのに例えば本来木であっただろう部分はコンクリートに着彩なのである。まるでへたなアミューズメントパーク化しているのである。しかも修復ではなくて適当な所であいまいに廃墟化しているのだ。まずそのことに驚かされた。どんな基準でそのようなことを行ったか理解できない。

ガイドブックには「約3700年前の宮殿が復元され、想像以上に生々しく保存されているのに驚かされる。...それらは訪れる者のロマンをかきたて、神話の世界へと誘う。」などと書いてあるがこれはとんでもない犯罪行為だと思え実は気分が悪くなった。

遺跡を見るという事は見る側にそれなりの想像力を必要とするものではないのだろうか。 

この遺跡の発掘により、先に述べたようにギリシア文明の存在が決定づけられたことは間違いない。しかし昨日のアクロティリ遺跡などの発掘(これらはエヴァンス以降)から見るとエヴァンスの行為(イギリスの考古学研究所が現在も管理しているらしい)は考古学として超えてはならない一線を超えたのではないかと思えてしょうがない。とても残念に思った。


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これはヨーロッパにおける最古の「道」だと言われている。


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