0728 ヨハネス・イッテン、ヴァン・デ・ヴェルデ

ワイマールに来た大きな理由を改めて考えてみると昔フォトモンタージュやデザインの歴史を調べていた時、ドイツのこの街がとても重要である印象を持ったからだ。第一次大戦から第二次大戦の間いわゆる黄金の30年代、ドイツにおいてベルリンと並んで最も重要な都市の一つだったのだ。かの有名なワイマール憲法もここで発布されたものだ。またここはゲーテが長く住み仕事をした場所としても知られている。実際来てみると驚く程こじんまりした街なのである。人口は5万人である。ドレスデンやライプツィヒの十分の一である。しかしバスに少し乗っているだけで街にはゲーテ広場、シラー通り、ショーペンハウアー通り、グロピウス通り、フンボルト通りetcと僕らが良く知っている名前がつけられた通りがいくつも存在し、ここがドイツ人の文化的故郷でもあることが否応なく感じられる。またドイツルネサンス最大の画家クラナッハはここを拠点に活動したし(画家であると同時に薬局も経営し市議会議員でもあった)またいうまでもなくバウハウスが最初に誕生した場所でもある。



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国民劇場広場。ゲーテの「ファウスト」が初演されリスト、シューマン、ワーグナーらが活躍した劇場であり、ここで1919年にワイマール憲法は採択されている。劇場の中までは入らなかったが印象はとても質素というかこじんまりしたものである。


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劇場前のゲーテとシラーの像。シラーは歌劇「ウイリアム・テル」の作者だそうだが私は全く読んだ事がない。ゲーテが彼をこの街に招き死ぬまでの5年間この街ですごしたらしい。

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国民劇場の向かいにあるワイマール・バウハウス博物館。

バウハウスは1919年にワイマールで発足した。その後1924-5年に市と対立し(社会民主党が与党から野党に転落したのをきっかけに)デッサウに移転している。いわばここでは初期のバウハウスを見る事ができる。その後ここは別の保守的な工芸学校となり、東西ドイツ統合後はバウハウス大学となっている。この間の様々な政治的、造形的理念の対立などの変遷はここでは詳述できないが、とにかく複雑な印象を持った。少なくとも今更バウハウス大学とネーミングする感覚が理解できない。僕の勉強不足かもしれずこの間の事情は分からないが、経歴詐称じゃないがうさんくさい感じがする。


しかしなによりもここで想像を超えて良かったのはヨハネス・イッテンであった。表現主義的で機能主義バウハウスに反するとしてグラフィックのファイニンガーとともに追放(?)された人としてまた色彩学の権威として知られる人だが、今回見る事のできた彼のドゥローイングが凄かった。(撮影は不許可だし図録にも掲載されてないので画像はありません)これは後で日本でじっくり検討するつもりである。ドゥローイングとタイポグラフィの合体したデッサンは本当にただものではないと感じた。多分バウハウスで続かなかったのは、造形上の主義の違いというより人間関係なんだろうなあとも思いました。イッテンはとにかく「あく」が強いというか、天才型で協調性には欠けていたのだろう。絵からはそのような印象を受ける。しかし滅茶苦茶鋭い。


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イッテンによる色彩のオブジェ


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イッテンのドゥローイング


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バイヤーのユニバーサル


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工芸はビーダーマイヤー、分離派の伝統をしっかり受け継いでいる事がわかる。


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クレー

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クラナッハが活動した市教会。


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クラナッハによる祭壇画。クラナッハの最高傑作だと思う。


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ヴァン・デ・ヴェルデの館を訪ねるも残念ながら修復中であった。


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ヴァン・デ・ヴェルデの館の向かいにバウハウス当時の校舎(現在はバウハウス大学)がある。ヴァン・デ・ヴェルデの設計である。


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正面


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裏側

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一階エントランス

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左右にヴァン・デ・ヴェルデとグロピウスの肖像。

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学生の作品。多分建築科の基礎授業だと思うが、律儀に初期バウハウス(あるいはロシアアヴァンギャルドのシュプレマティズム)に似てる所がかわいいというべきか、古くさいというべきか。どうも微妙。


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アトリエ

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ヴァン・デ・ヴェルデ記念室のようなところ


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教室階段


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正面吹き抜けの階段。


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バウハウス校の道をはさんでリストの家。

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街に貼られていたヴァン・デ・ヴェルデのポスター


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シラーの家。

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宿からワイマールの街を望む。

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コメント(3)

ギリシャ、中欧の大旅行ご苦労さん、やはり年ですね。たまには寝ためをした方がよいのでは〜奥さんお大事に〜ミュンヘン博物館どうして行かなかったのか、残然です。カンジンスキーばかり見て感動していた自分、悔やまれます。ゴちゃん、岡田君、この間会ったばかりの藤波さん、さぞかしのビールの味、良いひと時の再会に乾杯。

猛暑の中、大旅行お疲れさま、奥様共々寝ダメして下さい〜
ミュンヘン博物館良かったですね、私の時はカンジンスキーで感動、悔やまれます〜
ゴちゃん、藤波さん、岡田君再会のビールに乾杯。

勝井先生。ここ数日グータラ生活を送り体力、気力もだいぶ回復してまいりました。ミュンヘンのドイツ博物館は後で調べたところ(泥縄で情けないことですが)博物館史上、近代産業技術を系統的に集める博物館として世界でも最初期のものだそうです。藤波は事務所の展覧会で先生と偶然会えて結構お話ができたことがこの夏の最大のご褒美だったと言ってました。リエカは昨日に続き今日も雨。一雨ごとに夏が遠ざかり、かすかな秋の気配です。

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