午前中にボートをチェクアウトしていると、アスワンとはまた別のムハンマドが現れて私たちを次のホテルに連れて行くという。この日我々は夜遅くの飛行機でカイロに戻るのでそれまで荷物を置き休息などをするためのデイユースである。
このムハンマドもかなり胡散臭い男であった。
後で分かったことであるが私たちの一連のトラブル続きのアスワン、アブシンベル、ルクソールの旅行を仕切っていたのはどうやらこの男だったのである。この日の時点では我々はそれを知らない。
ホテルのチェックインの後、ルクソール博物館にまずは行きたいと我々が言っているのに土産物屋に連れて行こうとしたり、博物館は小さいから時間なんかかからないと言って食事を誘ったりするのだ。しかも博物館とは反対方向に随分歩かされた。いい加減頭に来てここからは自分達で行動するからあんたは帰っていいときっぱり言った。
ルクソール博物館は展示数こそ少ないものの傑作ぞろいであり、展示の仕方もエジプトの中でも数少ない真っ当なものだった。4時頃、博物館で遅めの昼食をとってホテルに戻る。
ホテルの近くのマーケットの中にインターネットカフェをみかけたので、久方ぶりにメールを確認し一日分だけブログを更新する。ナイルクルーズしている間ネットは全くできなかったのだ。
エジプトでの旅行エージェントとのやりとりにいささか辟易し、殺伐とした気持ちになっているところへK先生から絶妙なタイミングで我々を気遣うメールをいただいていた。妻とふたりそれを見ながら思わず泣きそうになりました。
先生のメールにはジョセフ・アルバースの言葉からの引用があった。
無断ですが以下、引用させてもらいます。
...
芸術とは
はじめに表現があるのではなく、
まず視覚を提示することなのだ。
芸術における視覚とは
洞察力、生命を見抜くこと。
だから芸術とは
対象ではなくて
経験なのだ。
そのことに気づくために
私たちは感受性を磨かなければならぬ。
それゆえ芸術は
そこにあり
そこで芸術は
私たちをとらえる。
...
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